11種混合ワクチン導入とレプトスピラ予防の必要性
【2017年11月26日追記
現在、京都微研のワクチンは販売がされていません。
そのため、当院ではレプトスピラの予防が必要な場合には、Zoetis社のバンガードプラス5/CV-L4(10種)、もしくは共立製薬のキャニバック9(9種)を使用しています。】
この度、犬の混合ワクチンの9種混合を廃止し、昨年発売された11種混合ワクチン(京都微研キャナイン11)を導入いたします。
当院ではこれまで犬の混合ワクチンは、
・6種混合ワクチン
・9種混合ワクチン
の2種類を用意し、生活環境から選択して頂いて接種していました。
6種混合と9種混合の違い。。。 単純に3種類 多く予防していそうに見えますが、実際のところは、「レプトスピラ症」を予防するか、しないかの違いです。
レプトスピラとはなんぞや?(。-`ω-)ンー
【レプトスピラの特徴】
- 細菌である(その他混合ワクチンで予防しているのはウイルス)
- 哺乳動物の腎臓で定着・増殖し、尿に排出
- 野生動物ではネズミが保有動物として問題
- その尿に汚染された水や土に接触すると皮膚や粘膜から侵入・感染
- 感染すると発熱などに始まり、最悪、肝不全・腎不全などで死亡する
- 人にもうつる「人畜共通感染症」で、診断されたら保健所に届ける必要がある
- 犬は例年全国で19〜165件の症例報告あり(1998〜2007年)
- ほとんどの犬が8〜11月に感染・発症
- ワクチンでの免疫維持期間が短い(半年〜1年?)
(人にうつるとは言っても、ペットから人に感染した報告は日本では1例しかないそうです。人では野生動物からの感染が年間20例ほどだそうです。)
厄介なことにレプトスピラには非常に多くの亜型が存在し、それぞれの亜型に対してのワクチンを接種しないと予防することができません。
7種・8種混合はレプトスピラを2つ予防、9種混合はレプトスピラを3つ予防、11種混合はレプトスピラを5つ予防していることになります。
日本で発生が確認されているレプトスピラを、A・B・C・D・E の5つの型に分けるとすると、
【各種混合ワクチンで予防できるレプトスピラ型(イメージ)】
- 7種・8種・・・レプトスピラ A・B
- 9種・・・・・・レプトスピラ A・B・C
- 11種・・・・・レプトスピラ A・B・C・D・E
ここで注目すべきデータをお伝えします。
なんと、2007〜2011年の国立感染症研究所の調査で、AとBはほとんど検出されず、Cが最も多く検出され、次にDとEが検出されたのです。
つまり、レプトスピラの予防には7種・8種混合はカバー範囲がかなり狭く、9種でもカバーが不十分である可能性が示されたのです。
レプトスピラの予防が不要な子には6種混合をお勧めします。
キャンプ場に行く、川・沼・田んぼに入る、野生哺乳動物が生息する場所に入る、多くの動物と接触するなどレプトスピラの予防が必要なわんちゃんには11種混合の接種をお勧めします。
「数が多いと何だか副作用が心配だわ・・・」という声は実際に多いですが、メーカーによると9種混合と比べて特に副作用が多いという報告は今のところないというお話でした。当院でも特に副作用は発生しておりません。(2015年7月更新)
接種費用は、6種混合ワクチン:6000円(税別)、11種混合ワクチン:7000円(税別)とさせていただきます。
ご不明な点はお問い合わせ下さい。 名古屋市天白区 名古屋みらい動物病院 院長
注:分かりやすくするためにレプトスピラをA〜Eと表記しましたが、実際の名前は、A=カニコーラ、B=イクテロヘモラジー(コペンハーゲニー)、C=ヘブドマディス、D=オータムナリス、E=オーストラリス を指しています。