猫の慢性腎臓病 其の3

2014年06月01日

6月ですね。暑いですね。自分が子供の頃はさすがに梅雨前にこれだけ暑いことはなかった気がします。
くれぐれも熱中症に気をつけましょう。病院を受診する熱中症の動物のほとんどが車中への放置です。
仮に10分間だとしても非常に危険ですので、細心の注意を払ってあげて下さい。

さて、今回は猫の慢性腎臓病の第3回です。今回が最終回ですが、よく受ける質問の中で重要なものをピックアップしてみます。

問.食べなくて困っています。体重も徐々に減ってしまって。どうしたらいいですか?

答.これは腎臓病の猫さんでもっとも多い悩みで、解決が難しい問題です。
食べない腎臓病食を頑張って続けて痩せるよりも、食べる市販食を適宜与えて体重を維持する方が良いことは間違いないでしょう。
急に調子が悪くなるのであれば腎臓病以外の病気が新たに発生していないかはチェックが必要です。
また、食欲増進剤としてレメロン錠(ミルタザピン)は有効でしょう。ただし、これは人間の抗うつ剤の1つで慎重に使う必要がありますのでご相談下さい。

 

問.吸着剤や活性炭の効果を教えて下さい。

答.コバルジンやネフガードが有名ですね。これらはごはんと一緒に飲むことで、腸管内毒素などが吸着されてそのまま便に排泄されるというものです。
内服することで血液検査の尿素窒素の数値が低下することも報告されています。
ただし、慢性腎臓病の余命を延長する効果は証明されていません。また顆粒状もしくは錠剤であるため内服を続けることが大変でしょう。
さらに腸管内の毒素以外に体に必要なものや他のお薬の成分を吸着しますので、その点にも配慮が必要です。

 

問.飼い主が自宅で皮下点滴をすることはできますか?

答.はい、可能です。動物病院によっては自宅での皮下点滴を認めていない病院もあります。
腎臓病の猫さんの通院ストレス、病院に来ると豹変する(怒る・パニックになる)、飼い主さんが病院の診察時間に来ることができない、などの場合は、皮下点滴のセットをお出しします。皮下点滴の方法もお伝えできます。

 

問.腎臓病になってから吐くことが多いのですが、何か対策はありますか?

答.吐いてしまう原因はいくつか考えられます。尿毒症の1つの症状かもしれませんし、高齢や腎不全の猫さんに多い便秘が原因かもしれません。
腎不全でよく吐くことに対する対処は、
・充分な水分をとること・・・水分の経口摂取、皮下点滴
・便秘があれば対処・・・充分な水分、ラクツロースシロップの使用、重度なら浣腸
・制酸剤(H2ブロッカー)の使用・・・CMで見かける人でも有名なガスター10など。腎臓病になると慢性的な胃酸過多になりやすいことが知られています。
・その他の薬を適宜使用・・・当院ではプロナミド(モサプリド)をよく使います。ただし犬の薬なので猫では効能外使用ということになります。

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実際にはその他にたくさん質問もありますし、知りたい情報もあるでしょうが、全国のネットユーザーにも有用であろう情報をメインに書きました。
この世の中、インターネットを見れば出所の不明な情報が、当たり前のことのように記載されています。
それらは、正しい情報、間違った情報、正しいか間違いか判断のつかない情報に分けられると思いますが、今回の記事を参考にそういった情報を眺めて頂くと有用な情報を取捨選択しやすいではないかと思います。(ほとんどが真偽不明な情報です。)

3回にわたって猫の腎臓病に関して書きました。参考にして頂けたら幸いです。
当院の患者様からは「更新遅いよ! (●`Д´●)ノ」という声も聞こえてきました。

たしかに! 更新頑張ります!